地平線

 私は同窓の者と相対するときに図らずも何がしかのどもりが出てしまい、はじめは面白がる奴もいたが徐々に遠巻きにされるようになった。あいつはおつむは悪くないが関わってもいいことはない、そもじれったくて、煩わしくて、見ていられないといった風に。

 一匙の気不味さと引き換えに私は一服の自由を手に入れた。牢獄のように見えた、意思に反して閉じ込められるという意味においては確かに純然たる禁固状態であるとも言える教室は、意識次第では眼前にだだっ広く広がる広大な野っ原にも感じられた。ぽつぽつと老木が並んで立っている。さながら、人間という獅子やハイエナに見つからぬよう生命を全うしようとするガゼルのように、ふわっふわっと宙に浮いてはだだっと駆けてみせる。思いの至らぬ者は致し方がない。

 そうして、私はますます内と外の別を色濃く硬いものにしていった。外には居心地の悪い現世がただただ漫然と揺らめていて、内には両の手で耳を塞ぎ、目を閉じ、窮屈にそうにしゃがみこんでいる私がいた。